私の母親は認知症です。2年前より症状が出始めました。
母は77歳になりますが、体は元気で若々しい印象さえあります。しかし症状は悪化し、今では何気なくやっていたことが出来なくなっています。
毎朝つくっていた味噌汁、電子レンジの操作、食料品の買い出しなど、サポートが無ければできません。
しかしながら症状が出て以来、何時間かかっても炊事、洗濯をこなそうとするのです。なかなか出来ない自分を情けないと思いながらも毎日続けるのです。
なぜだろう?
母は私の父親、介護にきた私や姉の『家族』なのです。子どもである私たち、長年連れ添った父に「美味しいものを食べさせてあげたい」「家の中を掃除してきれいにしてあげたい」と思っているのです。
去年の大晦日。食料品を買い出しに私と母でスーパーマーケットに行きました。
食材を買って車に乗った時に、「毎年買っている南マグロを買いたい」と母が言いました。私は母から店の名前を聞き、ナビで検索し、魚屋へ向かいました。南マグロのブロック(マグロの塊)で買うお店でしたので、魚をさばけるのか疑問でしたが、ブロックで500gを購入しました。
帰宅し、解凍するのを待ってから魚を切る準備をしますが、刺身包丁が見つからない。色々探したのですが見つからず、普通の包丁で切ることに。
母は頑張って切ろうとするのですが、なかなか切れません。包丁さばきもおぼつかない。それをみた父親が「そんなもの買ってきやがって!」と一言。
私の父はうつ病で、長いあいだほとんど何もせずに1日を過ごしています。人に会うのが嫌なのでしょう。人間関係が築けるのが母ひとりです。
そんな大事な存在の母に、なんとか家族に美味しいものを食べさせてあげたいと思っている母に、なんてことを。。。
私は涙がでました。母の優しさの偉大さに圧倒されたのです。こんな父、息子でも「家族」と思い、出来ないことを必死にやろうとしているのです。
私の人生、生活って何が重要なのだろう?
仕事?お金?
母の優しさに、人生で大事なものってなんだろうと考えざるをえません。